遺言書、という言葉を聞いてどんな印象をもちますか?
「お金持ちの話」「ちょっと怖い」「まだ早い」──そう感じる方が多いかもしれません。
でも実は、遺言書は特別な人のためのものではありません。むしろ、一人で暮らしている方や、頼れる家族がいない方にこそ、早めに考えてほしいものです。
遺言書を作る意義
遺言書とは、自分が亡くなった後に「誰に何を渡すか」「どうしてほしいか」を法的に残す文書です。
ただ財産を分けるためだけのものではありません。遺言書があることで、こんなことができます。
- 法定相続人(親族)以外の人に財産を渡せる
- 特定の人に「多め」に残せる
- お世話になった人・団体(NPOなど)に寄付できる
- 葬儀や死後事務について希望を記しておける
- 家族の間でのトラブルを防げる
遺言書は、あなたの意思を「声」として残す手段です。
遺言書がないと、どうなる?
遺言書がない場合、財産は「法定相続」のルールに従って分けられます。
民法で定められた法定相続人(配偶者・子・親・兄弟姉妹など)が一定の割合で相続します。これ自体は問題ではありませんが、こんなケースでは困りごとが生じます。
一人暮らしで、親族とほぼ連絡がない場合
→ 疎遠な親族が相続人になり、財産の行方が本人の意思と全く異なる結果になることがあります。
長年お世話になった友人や支援者に何か残したい場合
→ 遺言書がなければ、法定相続人以外には何も渡せません。
ペットの世話を誰かに頼みたい場合
→ ペット信託や負担付遺贈(財産を渡す代わりに世話を頼む)は、遺言書があってこそ設計できます。
内縁のパートナーがいる場合
→ 法律上の配偶者でない場合、遺言書なしでは相続権がありません。
遺言書がなければ、誰がどう動くかわからない。それが現実です。
特に遺言書を作っておくべき人
次のいずれかに当てはまる方は、早めの作成をお勧めします。
- 一人暮らしで、子どもや配偶者がいない
- 法定相続人(親族)と疎遠、または連絡先を知らない
- 法定相続人以外の人・団体に財産を渡したい
- 不動産を持っている(相続登記の義務化+相続人不明問題)
- 内縁のパートナーや、事実婚の関係がある
- ペットがいる
- 死後事務委任契約を検討している(契約書との整合が必要)
逆に、「財産がほとんどない」「託せる人に均等に渡せばいい」という場合は、必ずしも急ぐ必要はありません。ただ、作っておくことで残された方の手続きがぐっと楽になります。
遺言書の種類
遺言書には、主に3種類あります。
① 自筆証書遺言(じひつしょうしょいごん)
自分で手書きして作る遺言書。
本文はすべて自筆で書く必要がありますが、2019年の法改正で「財産目録(口座一覧や不動産リストなど)」だけはパソコンで作成して添付できるようになりました。
費用は基本的に無料(紙と印鑑のみ)。ただし、保管・形式の問題でトラブルになることもあります。
2020年からは「法務局による保管制度」が始まり、法務局に預けると紛失・改ざんのリスクを防げます(手数料3,900円)。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 費用がほぼかからない | 形式ミスで無効になることがある |
| いつでも書き直せる | 自分で保管すると紛失・隠匿のリスク |
| 手軽に始められる | 家庭裁判所の「検認」手続きが必要(法務局保管の場合は不要) |
② 公正証書遺言(こうせいしょうしょいごん)
公証人(法律の専門家)と一緒に作る遺言書。
作成後は公証役場に原本が保管されるため、紛失・改ざんの心配がありません。家庭裁判所の検認も不要で、相続手続きがスムーズです。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 法的安全性が高い | 費用がかかる(財産額によって異なる) |
| 紛失・改ざんのリスクなし | 証人2名が必要 |
| 検認不要で手続きが楽 | 公証役場への訪問が必要 |
③ 秘密証書遺言
内容を秘密にしたまま公証役場で存在だけ証明してもらう方法。現在はあまり使われていません。
遺言書作成の手順(自筆証書遺言の場合)
- 財産の棚卸し:預貯金・不動産・保険・株式などをリストアップ
- 相続人の確認:法定相続人が誰かを把握する
- 誰に何を渡すかを決める:具体的に書き出す
- 遺言書を自筆で書く:日付・氏名・押印が必須。全文自筆(財産目録以外)
- 財産目録を作成・添付:パソコンOK。各ページに署名・押印
- 法務局への保管申請(任意):最寄りの法務局へ持参。手数料3,900円
公正証書遺言の場合は、司法書士・弁護士に相談してから公証役場で作成するのが一般的な流れです。
費用の目安
自筆証書遺言(法務局保管なし):ほぼ無料
自筆証書遺言(法務局保管あり):3,900円
公正証書遺言:財産額・内容によって異なります。
| 財産額 | 公証人手数料の目安 |
|---|---|
| 〜100万円 | 5,000円 |
| 〜500万円 | 11,000円 |
| 〜1,000万円 | 17,000円 |
| 〜5,000万円 | 29,000円 |
| 〜1億円 | 43,000円 |
※ 財産が複数ある場合は合算して計算。司法書士への相談料が別途かかる場合があります。
遺言書が実行されるまでの流れ
自筆証書遺言(法務局保管なし)の場合:
- 相続人または受遺者が遺言書を発見
- 家庭裁判所に「検認」の申立て(勝手に開封してはいけません)
- 検認後、相続手続き開始
自筆証書遺言(法務局保管あり)の場合:
- 法務局から相続人への通知が可能(遺言書情報証明書の交付申請)
- 検認不要で、そのまま相続手続き開始
公正証書遺言の場合:
- 公証役場で原本を検索・確認(全国どこからでも検索可能)
- 検認不要で、すぐに相続手続き開始
「まだ早い」はないかもしれない
遺言書は、元気なうちにしか作れません。認知症が進んでしまったり、意思能力がないと判断された場合は、作成できなくなります。
「財産がないから」「託せる人に任せればいい」と思っていても、あなたの意思がなければ、残された方が困ることがあります。
まずは財産を整理することから始めてみてください。それだけでも、「自分のものを把握している」という安心につながります。
遺言書の作成を検討したい、専門職に相談したい、という方は &on にお声がけください。


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