ホームロイヤー契約とは?──一人暮らしの「もしも」を弁護士と備える方法

備えの基礎知識

「何かあったとき、すぐに相談できる弁護士がいたら」──そう思ったことはありませんか。

一人暮らしをしていると、入院で身元保証や支払いに困ったとき、体が不自由になって財産管理ができなくなったとき、契約でトラブルになったとき、将来判断能力が衰えたとき、誰にも相談できずに一人で抱え込んでしまうことがあります。会社員なら顧問弁護士がいる会社もありますが、個人にはそんな存在、普通はいません。

実はその「個人の顧問弁護士」にあたる仕組みが、弁護士会によって用意されています。それがホームロイヤーです。


ホームロイヤーって、なに?

ホームロイヤーとは、高齢者や一人暮らしの方が抱える「将来の生活や財産管理への不安」に、法律相談や財産管理を通じて継続的に寄り添う弁護士のことです。いわば「あなた専属の顧問弁護士」というイメージです。

弁護士会がこの制度を整備していて、たとえば第二東京弁護士会では、希望に応じて次の3つのメニューを組み合わせて利用できます。

メニュー 内容
見守り契約 定期的な安否確認+法律相談
財産管理契約 判断能力はあるが、体が不自由などの理由で財産管理を依頼したいとき
任意後見契約 将来、判断能力が低下したときに備えて後見人をあらかじめ指定

3つとも契約しなければいけないわけではなく、必要なものだけ選べます。


見守り契約は具体的に何をしてくれるの?

一番利用しやすいのが「見守り契約」です。第二東京弁護士会の例では、次のようなサービスが受けられます。

  • 1〜2か月に1回の安否確認
  • 1〜2か月あたり概ね1時間程度の法律相談
  • 入院など緊急時、医療機関への支払いを代行

費用の目安は、月1回の安否確認+月1時間程度の相談で月額1万円、2か月に1回のペースなら月額5千円程度(第二東京弁護士会の場合)。会によって金額や内容は異なります。

「何かあったときに動いてくれる人」を、家族や友人ではなく専門家との契約で確保できる。これがホームロイヤーの一番の役割です。


任意後見契約とセットで考える人も多い

将来、認知症などで判断能力が低下したときに備える「任意後見契約」も、ホームロイヤーのメニューに含まれています。

見守り契約で日頃から関係を作っておいたホームロイヤーに、そのまま任意後見人になってもらう、という流れが一般的です。すでに信頼関係がある弁護士に将来を託せるので、いきなり見知らぬ専門家に依頼するより安心という声もあります。

任意後見制度そのものについては、別記事「後見人、自分で選んでいいんです」で詳しく説明しています。


ホームロイヤーや任意後見人にも、できないことがある

ここで大切な補足があります。ホームロイヤーや任意後見人がついていても、次の2つはできません。

身元保証人にはなれない

入院や施設入所のとき、身元保証人へのサインを求められることがありますが、後見人(任意後見人も含む)は本人の代理人という立場上、身元保証人にはなれません。

なお、そもそも身元保証人がいないことだけを理由に入院を拒否するのは医師法19条1項に違反する、と厚生労働省が2018年の通達で明言しています。ただし2017年度の厚労省調査では、実に65%の医療機関が入院時に身元保証人を求める運用をしており、「本来はダメだが、現実には求められる」というギャップが今も残っています。

手術の同意はできない

医療行為への同意(手術など)は「本人にしかできない自己決定」とされ、後見人の代理権には含まれません。実務上、病院が後見人に同意書のサインを求めることは多いのですが、それは法的な効力を持たない同意にすぎません。後見人ができるのは、本人の意思を確認し、医師に伝え、意思決定を支援することまでです。

この空白を埋めるサービスはあるの?

身元保証は、民間の「身元保証サービス」で埋められる

身元保証人になってくれる民間サービス(「高齢者等終身サポート事業」と呼ばれます)が実際にあります。身元保証・日常生活支援・死後事務をセットで契約できる事業者が全国にあります。

ただしこの業界は過去にトラブルが多く、「預託金として数百万円を払ったのに使途が不明」「解約時に法外な違約金を請求された」といった相談が国民生活センターに寄せられてきました。これを受けて2024年6月、内閣官房・内閣府・金融庁・消費者庁・総務省が共同で「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」を策定し、契約前の重要事項説明や、全財産の寄付を強要するような契約の禁止などを求めています。

選ぶときは、料金体系を明確に開示しているかが重要な目安です。ただし総務省の調査では、費用の内訳までウェブ上で開示している事業者は43.7%にとどまり、まだ透明性が十分とは言えない業者も多いのが実情です。契約前に重要事項説明書をよく確認し、複数の事業者を比較することをおすすめします。

手術の同意は、どんなサービスでも埋められない

一方、手術の同意については、民間サービスを使っても代わりに決めてもらうことはできません。法律上「本人だけが行使できる権利」だからです。

埋める方法があるとすれば、「代わりに決めてもらう」ことではなく、「元気なうちに自分の意思をはっきりさせて、後見人や家族、医療者に伝えておく」ことだけです。延命治療や手術についての考え方をエンディングノートに書いておくことには、こういう意味もあります。


単発の相談なら「法テラス」という選択肢も

「そこまで継続的な関係は要らないけど、今困っていることをひとまず聞いてほしい」という場合は、国が設立した公的な法律相談窓口法テラス(日本司法支援センター)も選択肢になります。

法テラスの民事法律扶助では、収入・資産が一定基準以下の方を対象に、同じ問題について30分×3回まで無料で弁護士・司法書士に相談できます。収入基準は地域によって異なり、一人暮らしの場合の目安は手取り月収18万2,000円以下(東京23区や大阪市などの生活保護1級地は20万200円以下)です。基準を満たさない場合や継続的な相談には向きません。

ホームロイヤーとの違い

法テラス ホームロイヤー
対象 収入・資産が基準以下の方 制限なし
相談回数 同一問題について3回まで無料 契約している限り継続
関係性 そのつど単発の相談窓口 同じ弁護士との継続的な関係
見守り・安否確認 なし 定期的な見守りが含まれる

今困っていることが一つあって、それについて話を聞いてほしいだけなら法テラス。これから先、何かあるたびに相談できる「いつもの人」がほしいならホームロイヤー、という使い分けができます。


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