ネット銀行、使っていますか?
金利が高い、手数料が安い、スマホで全部できる。便利だからこそ、いつの間にかまとまったお金が入っている、という方も少なくないと思います。
でも、ふと考えたことはありませんか。
「自分が認知症になってパスワードを忘れたら、どうなるんだろう」
「亡くなったあと、家族は口座を見つけられるの?お金は引き出せるの?」
昔なら、通帳と印鑑がそろえば引き出せた。物理的なものだから、別々の場所に保管しておくだけでよかった。でも今は、ID・パスワードという「見えない鍵」がそれを担っています。
今日は、その「見えない鍵」をめぐる、知っておくべき現実をお伝えします。
まず知っておいてほしいこと:最悪の事態は「発見されないこと」
ネット銀行には、通帳がありません。郵便物も基本的に届きません。
つまり、口座の存在自体を、家族が知らないまま終わることがあります。
残高がそのまま宙に浮いてしまうのです。これが、ネット銀行をめぐる相続で最もよく起きるトラブルです。
パスワードが分からなくても、口座の存在さえわかれば手続きはできます。でも、存在を知られなければ、手続きのしようがない。
だからまず、「自分がネット銀行を持っていること」を誰かに伝えておくことが、何より大切です。
パスワードを、自分が忘れてしまったら?
認知症が進んだり、体調が悪くなったりして「あれ、パスワードなんだっけ…」となることは、誰にでも起こりえます。
本人がパスワードを忘れた場合、銀行はどう対応するか。
多くのネット銀行では、本人確認ができれば再設定の手続きができます。ただし、これは「判断能力がある状態」が前提です。
問題は、認知症が進んで「意思能力なし」と判断された場合。この状態になると、本人名義での取引ができなくなります。口座が「凍結」状態になり、家族であっても勝手に引き出すことはできません。
この状態を乗り越えるためには、「成年後見制度」か「家族信託」が必要になります。どちらも時間と手続きがかかります。
→ だからこそ、元気なうちに任意後見契約を結んでおくことが有効です。(このブログの「任意後見制度」の記事もあわせて読んでみてください)
亡くなった後、IDパスワードが不明でも相続はできる
「パスワードがわからないと、お金が取り出せないの?」
安心してください。パスワードが不明でも、相続手続き自体はできます。
ネット銀行のカスタマーセンターに連絡し、「口座名義人が亡くなりました」と伝えると、以下のような流れで手続きが進みます。
① 口座を止める(凍結手続き)
勝手に出金されないよう、まず口座を止めます。
② 必要書類を準備して提出
相続人であることを証明する書類を揃えます。
- 被相続人(亡くなった方)の戸籍謄本(出生から死亡まで)
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書
- 相続届(銀行所定の書式)
③ 残高の払い戻し・解約
書類審査が完了すると、相続人の口座に残高が振り込まれます。
パスワードは不要です。相続人であることが証明できれば、銀行は対応してくれます。
口座の存在を、家族が見つける方法
では、「そもそも口座があることを知らなかった」場合はどうすれば?
① メール履歴を確認する
ネット銀行は、取引ごとにメールを送ってきます。故人のメールを確認すると、どこのネット銀行を使っていたかわかることがあります。
② 他の口座の入出金履歴を調べる
実店舗のある銀行の通帳を見ると、「○○ネット銀行」への振込・引出が記録されていることがあります。ここからネット銀行の存在を追えます。
③ スマートフォンのアプリを確認する
スマホにネット銀行のアプリが入っていれば、それが手がかりになります。
④ 主要ネット銀行に問い合わせる
住信SBIネット銀行・楽天銀行・PayPay銀行・auじぶん銀行・イオン銀行など、利用しそうなネット銀行に一件ずつ問い合わせる方法もあります。時間はかかりますが、これで見つかるケースも多いです。
ID・パスワードの保管、どうすればいい?
「紙に書くのは危ない」「スマホに保存するのも不安」「でも記憶だけじゃ限界がある」──
これは本当に悩ましい問題です。銀行各社も「完璧な方法はない」としながら、いくつかの選択肢を示しています。
おすすめの保管方法
① パスワード管理アプリを使う
1Password・Bitwardenなど、専用アプリにパスワードをまとめて管理する方法。アプリ自体は「マスターパスワード」ひとつで守られています。信頼できる人にそのマスターパスワードだけ伝えておけば、もしものときに対応できます。
② 金庫に紙で保管する
アナログですが、確実な方法のひとつ。金庫や鍵のかかる引き出しにパスワードリストを入れておき、「金庫の場所と開け方」だけをバインダーや別のメモに記しておきます。
③ 銀行のデジタル遺産サービスを使う
三井住友銀行の「デジタルセーフティボックス」など、ID・パスワードを自分だけが見られる形で保管し、万一の際は家族も確認できるサービスが登場しています。
④ 信頼できる人に直接伝えておく
家族・友人・支援者など、自分が信頼できる人にネット銀行の存在と大まかなログイン情報を共有しておく方法。口頭・手紙どちらでも。
「なかったことにする」のが一番こわい
ネット銀行は便利です。でも、その便利さが「見えない資産」をつくってしまいます。
パスワードが複雑でも、保管場所を伝えていなくても、口座の存在を誰かが知っていれば、銀行は相続手続きに対応してくれます。
あなたの大切な財産が、あなたの望む形で引き継がれるように。まずできることから、準備を整えておきませんか。
合わせて読みたい:
– 大切な書類、どこに置いていますか?
– PCとスマホを「託せる状態」にする
– 後見人、自分で選んでいいんです(任意後見制度)


コメント