ひとりのとき、急に入院になったら。── 今日から整えられる5つのこと

備えの基礎知識

「もし急に入院になったら、どうしよう」

そんな不安を、ふと感じたことはないでしょうか。特に症状があるわけでも、体が悪いわけでもない。でも、ひとりで暮らしていると、どこかに引っかかっている。

その感覚は、正しい感覚だと思います。

救急搬送は、誰にでも起こる

少し数字を見てみます。

総務省消防庁の統計によると、日本では年間約700万件の救急出動があります(2022年)。そのうち搬送された人は約620万人。単純計算で、日本人の約20人に1人が、1年間に救急搬送されていることになります。

搬送理由の約半数は急病です。脳卒中、心疾患、転倒・骨折——これらは若い人にも起こりますし、特に一人暮らしの方は発見が遅れるリスクがあります。

「自分は健康だから大丈夫」は、残念ながら理由になりません。救急搬送の半数以上は、65歳未満の方です。

一人暮らしの入院で、何が困るのか

一人暮らしで急に入院になったとき、何が問題になるのか。実際に困ることを整理してみます。

入院・手術には、同意書への署名が必要です。意識がある場合は本人が署名できますが、意識がない・判断力が低下しているときは、家族など「身元保証人」が対応します。頼める人がいないと、手術の開始が遅れることもあります。

多くの病院は、入院時に連帯保証人(身元保証人)を求めます。家族がいない・遠方・頼みにくいという場合、この問題は予想以上に大きなハードルになります。

入院が決まっても、パジャマ・下着・洗面用具・保険証・お薬手帳——これらを準備して持ってきてくれる人がいないと困ります。病院のスタッフは代わりに取りに行けません。

入院している間、家は無人になります。ペットがいれば世話が必要ですし、鍵をどうするかも問題です。

仕事をしている方は、急な欠勤・休業を職場に連絡しなければなりません。自分で動けない場合、誰かが代わりに連絡を取ってくれる必要があります。

今日から整えられる、5つのこと

こうして並べると、問題が山積みに見えます。でも一つずつ整えておくことで、「急なとき」の混乱はずっと小さくなります。

1. 緊急連絡先を決めて、伝えておく

まず「何かあったときに連絡する人」を決めましょう。家族・友人・知人・民生委員——誰でもかまいません。電話番号を記録しておくこと、そしてその人に「緊急のときは連絡していいか」と一言伝えておくことが大切です。

「誰もいない」という方は、地域包括支援センターや社会福祉協議会に相談すると、支援の選択肢を一緒に考えてもらえます。

2. 身元保証・入院時の同意に備える

頼める家族がいない場合は、身元保証サービス任意後見制度の利用を検討しましょう。

身元保証サービスは、NPO・一般社団法人・民間企業などが提供しており、入院時の同意や連帯保証を代行してくれます。費用や内容はサービスによって異なりますが、月額数千円〜のものもあります。任意後見制度は、自分が判断力を失ったときのために、信頼できる人(弁護士・司法書士・知人など)を後見人に指定しておく制度です。

どちらも「元気なうちにしか契約できない」ものです。健康なうちに動いておくことが、最も大切です。

3. かかりつけ医・服薬情報を書き残す

救急で運ばれたとき、医師が最初に必要とするのは「今どんな薬を飲んでいるか」「アレルギーはあるか」「かかりつけ医はどこか」という情報です。

お薬手帳は必ず手の届く場所に。アレルギーや持病がある方は、メモにして財布に入れておくと安心です。

4. 入院セットを準備しておく

「もし入院になったらすぐ持っていける袋」を用意しておく方法があります。

パジャマ・下着・洗面用具・スリッパ・イヤフォン・充電器・お薬手帳のコピー・保険証のコピーなど。全部まとめて袋に入れ、場所をノートに書いておく。誰かに取ってきてもらえる状態にしておくだけで、急なときの混乱がかなり減ります。

5. ペット・自宅の対応を決めておく

ペットがいる方は、「急に預かってもらえる人・場所」を事前に確認しておきましょう。かかりつけの動物病院やペットホテルに「緊急時はお願いできるか」と聞いておくだけでも違います。

鍵については、信頼できる人に合鍵を預けておくか、合鍵の保管場所をノートに書いておくと、入院中の安否確認にも役立ちます。

準備は「不安を消すこと」ではなく、「不安を小さくすること」

急な入院を完全にゼロにする方法はありません。でも、「もし入院になっても、こうしてある」という具体があると、日常の中の漠然とした不安は、だいぶ薄まります。

心理的に言えば、不安の多くは「何が起きるか分からない」という不確かさから来ています。「何が起きたらどうする」が決まっているだけで、人は意外と落ち着いていられるものです。

一度に全部やらなくていい。まず「緊急連絡先を一人決める」だけでも、今日できます。

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