お薬手帳、持ってますか?──「たかが手帳」が、あなたの体を守っている理由

備えの基礎知識

「お薬手帳ありますか?」

薬局でそう聞かれるたびに、「家に置いてきた」「なんとなく断っている」という方、いませんか。

実はこの小さな手帳、使い方次第で、重大な薬のトラブルを防いでくれる「最後の砦」になります。特に複数の病院に通っている方、高齢の家族がいる方には、ぜひ読んでほしい話です。

複数の病院に通っていると、何が起きているか

眼科、耳鼻科、皮膚科、内科、整形外科——高齢になるほど、受診する診療科は増えていきます。それぞれの専門医に診てもらえるのは、日本の医療の強みです。

でも、落とし穴があります。

受診のとき、先生との会話の中でこんなことは起きていないでしょうか。

「そういえば先生、最近肩も痛くてね…」 「それは大変ですね。じゃあ湿布を出しておきましょうか」 「ありがとうございます」

先生の親切心から、ごく自然に処方が増えていく。でも同じような成分の湿布を、整形外科でもすでにもらっていたとしたら——。

こうした「重複投薬」は、決してまれな話ではありません。

「7種類以上の薬」を飲んでいる高齢者は、4人に1人

75歳以上の高齢者のうち、4人に1人が7種類以上の薬を処方されているというデータがあります(厚生労働省)。5種類以上では約4割にのぼります。また80代以上では、3施設以上から処方を受けている方が3人に1人という調査結果もあります。

複数の薬を同時に飲むこと(多剤服用・ポリファーマシー)は、それ自体がリスクになります。薬同士の飲み合わせによる副作用、意図せぬ成分の重複、過剰投与——これらは、患者本人も、個別の担当医も気づきにくい形で起きることがあります。

薬剤師が「お薬手帳を見せてください」というのは、まさにこのチェックをするためです。

漢方・サプリメントも、伝えてください

見落とされがちなのが、漢方薬や市販のサプリメントです。

漢方薬には薬効成分が含まれており、西洋薬との相互作用が問題になることがあります。たとえば甘草(かんぞう)は多くの漢方薬に含まれており、複数の漢方薬を飲むと知らないうちに過剰摂取になることがあります。

お薬手帳には、処方薬だけでなく、市販薬・漢方薬・サプリメントも自分でメモしておくことができます。

「お薬手帳を断る人」がいる理由

薬局でお薬手帳の受け取りを断る方には、それなりの理由があります。

他には、「かさばる」「どこにあるか分からなくなる」「見られたくない」といった声も聞きます。

ただ、実態として、お薬手帳を持参しない薬局では重複投薬や飲み合わせチェックが難しくなります。「面倒くさいもの」ではなく、「自分の体を守るツール」として、少し見方を変えてみてほしいのです。

お薬手帳があるだけで、こんなことができる

複数の病院の処方が一覧できるため、薬剤師が重複や相互作用をチェックできます。

過去に薬でアレルギーが出たことがある方は、その記録をお薬手帳に残しておくと、新しい病院でも素早く共有できます。

意識がない状態で搬送されたとき、お薬手帳が手元にあれば、医療チームが服薬情報を即座に確認できます。

どの時期にどの薬を飲んでいたかが分かると、体調の変化を振り返るときに役立ちます。

マイナ保険証を使っている方へ

マイナ保険証を使うと、受付で「薬剤情報を医師・薬剤師に提供しますか?」という確認が入ります。これはお薬手帳と連動する「デジタル版の処方履歴共有」のような仕組みです。複数の病院に通っている方ほど、この連携を活用することで重複投薬の防止につながります。詳しくは別記事「マイナ保険証の『連携しますか?』、同意していますか?」をご覧ください。

お薬手帳、まだ持っていなければ今日から

お薬手帳は、薬局で無料でもらえます。スマートフォンで使えるアプリ版もあります。

大切なのは「持つこと」と「毎回見せること」の両方です。手帳だけ持っていても、使わなければ記録が増えません。薬をもらうたびにシールを貼ってもらい、薬局に行くたびに見せる。それだけで、複数の病院にかかっていても薬の重複チェックが働くようになります。

「今まで断ってきた」方も、次の受診のときから再スタートできます。遅すぎることはありません。

合わせて読みたい:マイナ保険証の「連携しますか?」、同意していますか?

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